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施設紹介小山イーストクリニック(栃木県)

ライフスタイルを
どのように問診されていますか?

大橋 博 おおはし ひろし

小山イーストクリニック 理事長
日本糖尿病学会糖尿病専門医
全国臨床糖尿病医会 副会長

栃木県小山市にある小山イーストクリニック院長の大橋博先生は、『糖尿病治療の主役は患者さんご自身。
医療者は患者さんを支える杖であれ』をモットーに、糖尿病の治療にあたっています。
今回は、その治療のモットーを実践する上での診察の工夫や心構え、注意点をお聞きしました。

Q:先生の診察の基本は、「患者さんと話をすること」とお聞きしました。具体的には、どのように患者さんとお話しされるのですか。

大橋:糖尿病の発症・進展において、ライフスタイルが大きく影響することは周知の事実です。問診は疾病診断に重要ですが、糖尿病の場合はライフスタイルの問診が診断・治療において特に重要であると考えます。まず、患者さんの緊張を解きほぐすためのICE BREAKから始め、言葉のキャッチボールがスムーズにいくように心がけます。コミュニケーション技術はコーチングを応用し、糖尿病患者さんの問診は、看護師と協力し30分以上時間をとります。
 まずその人の職業とライフスタイルを聞きます。主婦ならば子供さんが何人か、働いている場合は、会社の所在地や通勤方法、帰宅時間など、具体的なライフスタイルを聞いて、その方の糖尿病治療のいわば設計図のようなものを決めます。家に例えるなら、その人が住みやすくリフォームするイメージです。栄養バランスの良い食事を規則正しく、日中運動、夜十分な睡眠をとる標準的なライフスタイル設計図を教育・指導もしくは強要(笑)することは簡単ですが、現実にはできないことが多いです。家のリフォームに例えると、現在の間取りで生活を合わせていくことができるように、今、本人が一番問題と思っているところをなるべく値段は安く、簡単に直せて、最も効果があがるよう私どもが判断し提案します。そういった会話でコミュニケーションをとり、信頼が得られるように治療を進めていきます。

Q:たとえばライフスタイルの改善も含めて具体的にどのような治療を提案するのですか。

大橋:画一的に1日何カロリーでとか、1日30分歩きましょうという話は避けます。問診から得られた情報をもとに、通常は3種類ほどライフスタイルの改善を提案し、その中でできるものを選んでもらいます。患者さんの勤務地、帰宅時間、仕事内容、家族の行動パターンなどのライフスタイルを知ることで、具体的に「朝、ラジオ体操しましょう」「通勤で歩きましょう」「会社の階段を上り下りしましょう」など、その人の生活に即した具体的な提案ができます。そのためにじっくり話を聞きます。糖尿病はライフスタイルそのものが病気なので、そのライフスタイルを聞くことに時間をかけます。
 糖尿病は、慢性疾患ですから患者さんと長くお付き合いする必要があります。そのためには、患者さんのライフスタイルの理解に時間をかけ、食事・運動・薬物療法などの面からの提案力が大切です。

Q:患者さんの状況を見て、医師が治療法を提案するということで、いってみれば、主治医は糖尿病患者さんご自身ということでしょうか。

大橋:そうですね。糖尿病の主治医は患者さんご自身です。私ども医師は患者さんという研修医の指導医で、患者さんという研修医が、自分自身に対し食事・運動・薬物療法を行うと考えればよいと思います。研修医は、知識・技術また意欲もさまざまなレベルがあることはご存知の通りです。