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D-REPORT GUIDANCE

3つの心がけで患者さんの
自己変容を促す

手納 信一 てのう しんいち

手納医院 院長(島根県)
NPO法人島根糖尿病療養支援機構 理事
島根県糖尿病療養指導士認定機構 研修委員長

糖尿病診療における、心理療法の基本的な考え方をお教えください。

 患者さんの心の中では、慢性疾患の病名を告げられた時から受容のプロセスが始まります。大切なことは、健康だった過去の自分と、慢性疾患と共に歩むこれからの自分が一致するかどうかということです。すんなりと受け入れられる方もいる一方、手こずる患者さんも少なくありません。
 糖尿病専門医は、心理臨床家ではありません。ですが、患者さんが疾患を受容し、自ら必要な療養行動を行う心持ちになるために、心理的サポートを行うことも大切な役割となってきます。このようなとき、心理療法的な考え方が役に立つことがあります。
 米国の臨床心理学者カール・ロジャースは、来談者中心療法(Client Centered Therapy)を提唱しました。

1. 積極的関心: こちらの主観的な判断を入れない。
2. 共感的理解: さながら自分の身に起きたかのように、患者さんの話を聞く。
3. 自己一致: 自分の心の中にあることと違ってはいけない。


 このように接すると、患者さんは他者から大切に扱われていると感じ、心の中に治る気持ち(自己治癒力)がわき出てくるようになります。
 療養行動パターンを変えるのは、医療者が患者さんのためにと考えて行う説明や説得ではなく、患者さん自らの変化なのかもしれません。