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極める! くすりと療養指導

シリーズ 2(2回連載)

自動車運転と低血糖への対策

佐竹 正子 さたけ まさこ

日本糖尿病療養指導士
薬局 恵比寿ファーマシー
管理薬剤師

2013年6月に改正道路交通法が成立し、
無自覚性低血糖への指導がより重要となった。
自動車運転をする糖尿病患者への注意点を解説する。
 
 糖尿病患者の合併症発症・進展予防には、血糖コントロールが欠かせない。しかし、厳格な血糖コントロールは「低血糖と紙一重」でもある。低血糖の前駆症状で適切な対処をせず、低血糖を繰り返していると、無自覚性低血糖により、突然の意識障害を引き起こすことがある。
 糖尿病薬の添付文書には、「低血糖発症による自動車運転や高所での作業には注意が必要」と記載されているが、2014年6月に施行された改正法では「車の運転に支障をきたす可能性のある病気を持つ人が、免許の取得・免許証の更新をしようとする場合に、判断のため質問票を交付し、虚偽の記載・報告をした人は1年以下の懲役または30万円以下の罰金」と規定された。
 この「車の運転に支障を来す可能性のある病気」には、「無自覚性低血糖」も含まれている。実際、運転時の低血糖が原因の自動車事故は多く発生しており、なかには民事訴訟にまで発展した事例もある。
 自動車を運転する患者には、通常の低血糖対策とは異なる説明が必要である。一般的なブドウ糖の携帯確認は「身に付ける」ということで「バッグの中にブドウ糖を常備する」でもよい。しかし、運転中に低血糖と感じ、ブドウ糖を摂ろうにも、必ずしもバッグが手の届く位置にあるとは限らない。また「ダッシュボードにブドウ糖を入れている」と言う患者もいるが、運転席からダッシュボードを開くことは難しい場合もある。低血糖を繰り返している患者では、低血糖を感じてから意識を消失するまでの時間が短いことも想定される。これらのことから、患者への説明では、「具体的に場所を指定して」説明することが重要である。例えば、運転時には、運転席横のサイドポケットや助手席との間の飲料置場など、すぐに手が届く場所にブドウ糖や糖分を含む飲料を必ず常備するなどだ(参考:米国糖尿病学会「交通事故を起こさないための低血糖対策7カ条」)。