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ナースの目

コーチングで展開する
療養指導①(3回連載)

坪内 淳子 つぼうち じゅんこ

大石内科クリニック(京都府)
京都府糖尿病療養指導士
(糖尿病療養指導歴3年)

 糖尿病の療養指導と聞いて、皆さんはどのように思われますか。
 「糖尿病の知識を教え、実行してもらう。それをサポートするのが看護師の役目。指導する看護師は糖尿病のスペシャリストである」。
 そんなふうに私は思っていました。私はこのクリニックに来るまで療養指導の経験がありませんでした。そのため、早く他のスタッフに追いつこうと必死でした。他のスタッフの療養指導を見学し、一番戸惑ったのは、私ならこう言うと思う言葉と、全く別の言葉が指導しているスタッフの口から出てくることでした。その違いの元は「コーチング」でした。
 コーチングとは、「答えは相手(患者さん)の中にある」という考え方を基本にした、近年注目されているコミュニケーション手法の1つです。
 まずは、患者さんの言うことを否定せずに受け止め、患者さんとの信頼関係を築いていきます。すると患者さんは「果物をたくさん食べた、甘いものも多かった」など、本来なら医療者に話しにくい出来事も、ありのまま話されるのです。これは私にとっては驚きでした。そして、会話の内容をまとめながら、一緒に考え、患者さん本人に答えを出してもらうよう話を進めていきます。
 実際のコーチング手法や効果は、傍から見ている分には、よく分かるのですが、頭では理解できても実践するのは難しいものです。臨床の場で自然にできるようになるには、日々コーチングを意識しながら対話をしていくことが大切だと痛感しています。幸い、他のスタッフも同じようにコーチングを学んでいるところなので、気になることはすぐに聞いたり、教え合ったりできる環境も、スキルアップに繋がっていると思います。
 また、コーチングセミナーで学ぶ過程でも新たな出会いがあり、どんどん世界が広がっていく楽しみもあります。振り返ると、当クリニックで働く前は、何か新しいことを始めようとは、思いもしませんでした。糖尿病療養指導だけでなく、いろいろな視点から物事を見るようにと指導してくださる好奇心旺盛な先生をはじめ、個性豊かなスタッフに囲まれて仕事ができることに感謝しています。


「メディカルサポートコーチング」
奥田弘美 他(中央法規出版)