Home>バックナンバー>2016冬号TOP>極める! くすりと療養指導

糖尿病患者への非常時の対応

 糖尿病患者への処方薬の確認にも、お薬手帳が大いに役に立った。お薬手帳がなくても、患者が薬品名やインスリンの色を憶えており、対応できるケースもあったが、使用薬品の手がかりが全くない場合は、対応に苦慮した。患者には、非常時に備え、お薬手帳を常に携帯すること、インスリンや経口糖尿病薬の薬品名を憶えておくことなどの指導が必要である。また、お薬手帳のない患者の来院に備え、医療機関では内服薬やインスリンの一覧表、写真などを用意しておきたい。
 非常時には、食事内容の確認も重要である。震災直後は食べ物がなく、1〜2日何も口にしていないという被災者もいた。食糧支援が届くようになっても、始めはおにぎりや甘い菓子パンだけということも多かった。食事量が不足したり、炭水化物に偏った食事の影響で、低血糖や高血糖になっていた可能性がある。普段から食事摂取不良時のインスリン・血糖降下薬治療に関する指導が重要である。

医療・医薬品の供給を止めないために

 震災後、食べる物も十分になく、大変な状況であるにもかかわらず、たくさんの患者から、「薬を調剤してもらい、安心したよ。ありがとう」と、お礼を言われた。薬剤師として、薬の供給という基本的業務の重要性を改めて感じた。
 災害は、その時々で被害の状況が異なる。阪神淡路大震災と東日本大震災では、必要とされる薬品も違った。どのようなときも、患者に必要な医療や医薬品を供給し、互いに情報を提供、共有することが、全ての医療者の重要な職務である。
 求められるのは特別なことではなく、医療者としての本来の業務である。いかなる状況でも任務を果たせるよう、普段から知識と技術を備え、地域の医療・介護の連携を作っておくことが重要である。

■ 患者

● 非常時に備え、数日分のインスリンや経口糖尿病薬を用意しておく。

● お薬手帳を常に携帯する。
インスリンや経口糖尿病薬の薬品名、色などを憶える。

● 災害時はおにぎりや菓子パンなど、炭水化物に偏った食事になりがち。
食事摂取不良時のインスリン・血糖降下薬治療の対応を確認する。

■ 医療機関、薬局

● お薬手帳のない患者の来院に備え、内服薬やインスリンの一覧表、写真などを用意しておく。