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施設紹介奥口内科クリニック(仙台市)

『いつものお薬』のままに
なっていませんか?

奥口 文宣 おくぐち ふみのぶ

奥口内科クリニック院長
日本糖尿病学会
功労学術評議員・専門医
全国臨床糖尿病医会理事

患者さん手づくりの
奥口先生人形と

 この20数年間で、経口血糖降下薬のクラスは、事実上の1種から7種に増え、治療の選択肢が広まった。
また近年は、HbA1cだけでなく、血糖値の日内変動に着目した薬剤選択が重視されている。
薬剤を変更する際の注意点、患者対応の仕方などを、奥口内科クリニック院長 奥口文宣先生に伺った。

 HbA1c良好、体重増減なし。特に変化なし――。
 このような優等生患者に対して、「じゃあ、いつものお薬出しておきますね」という一言で診療を終えてはいないだろうか。
 医師にとって、薬剤の選択は悩みどころだ。特に問題がないのだから「いつものお薬」のままでよいのか、患者の加齢や、生活スタイルの変化を考慮して、薬を増減、または他剤に切り替えたほうがよいのか。
 薬剤の選択について、奥口内科クリニック(以下奥口内科)の奥口先生は「患者さんにとって、常にベストな提案をしていくべきだと思う」と言う。「中でも、SU薬の減量は一考の余地があると思います。SU薬は、強力な血糖降下作用を持ちますが、その分、低血糖への懸念が大きい。血糖変動が大きいと、血管内皮細胞のアポトーシス(細胞死)が促進されます」
 CGM(持続血糖モニター)でモニタリングすると、SU薬を服用している患者は、無自覚性低血糖や、夜間低血糖が頻回に起きていることがある。特に、高齢者ではよく見られるので注意したい。
 さらに、食後高血糖が合併症、中でも心血管疾患のリスクファクターであることは、DECODEスタディ、舟形町研究で明らかになっている。STOP-NIDDMスタディでは、α-GIで食後高血糖を改善すると、心血管疾患の抑制が示された。
 HbA1cだけでは、食後高血糖や、潜在する低血糖はわからない。今後は、血糖変動に着目した薬剤の選択が望まれる