Home>バックナンバー>2016冬号TOP>ナースの目

ナースの目

コーチングで展開する
療養指導②(3回連載)

井上 里絵 いのうえ りえ

大石内科クリニック(京都府)
日本糖尿病療養指導士
糖尿病療養指導歴 6年

 私の勤める大石内科クリニックは、糖尿病専門のクリニックです。診療は予約制で、特に療養指導に力を入れています。
 私は前の病院を退職後、結婚、出産を経て、大石内科クリニックに就職しました。
 実を言うと、私はそれまで糖尿病患者さんの看護には、苦手意識がありました。循環器、救命センターと主に急性期看護に携わってきた私にとって、糖尿病や療養指導はあまり経験がなく、どちらかといえば、関わりたくないなと思っていたのです。
 療養指導を始めた当初は、「患者さんの血糖コントロールを良くしてあげたい」「HbA1cを下げなければ」という思いでいっぱいでした。ですが、間食がやめられなかったり、仕事の都合で食生活が乱れてしまうという患者さんが多く、一生懸命指導を行っても、なかなか数値が改善しません。
 「どうしてきちんと言うことを聞いてくれないんだろう? 療養指導って、大変だ」
 私は生活を変えようとしない患者さんの気持ちが理解できず、自分の無力さや経験不足を責めていました。

 そんなとき、院長の勧めでコーチングを学ぶことになりました。コーチングでは、患者さんと信頼関係を築くことはもちろん、それを受け止める側の自分のあり方(自己基盤)も大切だと教わりました。
 私が療養指導の際に気をつけているのは、「患者さんをありのまま受け入れる」という点です。自分の中で「良い」「悪い」を判断せずに承認することで、患者さんと良い関係を築けていると日々実感しています。
 また、「答えは患者さんの中にある」と信じ、任せることで自分の中でのしんどさやプレッシャーも軽減しているように思います。コミュニケーションが難しい場面でも、構えずに療養指導を行えるようになり、「これなら私にもできるかも知れない」と仕事にも前向きになりました。
 スタッフ同士のコミュニケーションや、子育てにもコーチングが役立っています。これから先、まだまだ壁にぶつかることも多いと思いますが、コーチングを活用して、乗り越えるきっかけにしたいと思います。