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症例から学ぶ

糖尿病と診断され、
不安を抱える初診患者さんと
どう向き合うか。

那珂記念クリニック(茨城県)
糖尿病専門医
遅野井 健 おそのい たけし

那珂記念クリニック院長
糖尿病診療歴34年
日本糖尿病学会専門医・研修指導医
茨城県糖尿病協会副会長

日本糖尿病療養指導士
道口 佐多子 どうぐち さたこ

那珂記念クリニック療養指導部部長
糖尿病療養指導歴35年
茨城県糖尿病療養指導士会・会長

当院における外来指導は、指導開始となった患者さんに対し来院ごとに約1年間(12〜15回)で、療養に必要な知識や具体的方法を取得できるよう計画し指導を行っている。指導内容は独自のカード型パスを用い、担当は糖尿病療養指導士を中心に、さまざまな職種(看護師・栄養士・薬剤師・検査技師)がかかわっている。

症例

◎患  者:
A氏 29歳 男性 2型糖尿病
◎臨床所見:
FBG 172mg/dL HbA1c 14.1% GA 31.8% 抗GAD抗体1.3U/mL IRI 7.0μU/mL BMI 26.8 Kg/m2 BP 126/84 mmHg TG 172mg/dL
◎合併症:
眼底所見なし 腎症1期 神経障害なし IMTやや肥厚
プラークあり
◎糖尿病家族歴:
祖父
◎現病歴:
半年前健診にて血糖高値指摘あるも放置。最近高血糖症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)著明にて受診

[初診時のヒアリング](カード型パス-①を使用)

①A氏の生活状況
食生活 ほとんど毎日外食(3回/日)加糖飲料(700〜1000mL/日)
間食(夕方 せんべい等)・アルコール(3〜4回/週、3〜4単位/回)。
運動習慣 なし。
社会的背景 職業:工事の現場監督 
世帯構成:1人暮らし。
②A氏が抱える病気に対する不安や悩み
◎仕事が忙しいのに病気になってしまって困る。
◎糖尿病は合併症が出ると聞いているが、自分にはあるのかどうかわからない。
◎血糖値が高いとは言われたが、どうすれば治るのか知りたい。
③ヒアリングから導きだされた指導上のポイント
糖尿病に対する基本的知識がない。
・働き盛りで仕事が忙しく、健診での指摘のみでは受診行動には至らなかった。
・祖父が糖尿病だったが、いままで疾患への関心はほとんどなかった。
・肥満が疾患に直結するとは考えられず、食事を制限するにはいたらなかった。
④A氏の人間性はどんな人か
(得られた情報をもとに患者像を想定し介入法を検討する)
・まだ若く働き盛りであることから、将来の仕事に対する不安を持っている。
・疾患への知識をきちんと持てば、治療への意欲や理解はあると思われた。
・糖尿病の治癒を目指して、治療上良いことはなんでもやろうと思っている。
・短期集中的に実施することで、“燃え尽き”に注意する必要あり。