Home>バックナンバー>2014夏号TOP>症例から学ぶ

 HbA1cは14.2%から1か月後12.3%に改善し、体重は72.6kgから71.8kgと0.8kg減少していたので、本人と奥様を賞賛した。患者の食生活の聞き取りを行った。

①A氏の生活状況

•食生活:毎日缶ビール6本、焼酎4-5杯。ラーメンとチャーハンセットなど炭水化物が好物。野菜はほとんど食べなかった。夕食時間は19時から20時。3食とも自宅で摂取。
•運動習慣:週1-2回ゴルフの打ちっぱなし、月1-2回ゴルフコース
•社会的背景:デスクワークと営業の自営業
•喫煙:20-30本/日
•世帯構成:妻と2人

②A氏の糖尿病に対する思いと悩み

•もともと100kgの肥満だったが、急激に体重が30kgも減り、健診で糖尿病を指摘され危機感を覚えた。
•自覚症状はのどが渇く程度。今回糖尿病と診断されて驚いた。肥満が病気を引き起こすという認識がなく、糖尿病についての病識もなかった。糖尿病は薬を飲んでいれば何を食べてもいいと思っていて、糖尿病から失明、下肢切断などのおそろしい合併症が起こるとは知らなかった。
•まだ30歳代と若いので将来合併症がでないようにしたい。

A氏:妻が毎食サラダ、野菜の煮物などを作ってくれるので、先に食べきってからおかずを食べるようにしている。ご飯の量は以前の3分の1くらいに減ったが、特に空腹感はないし、ストレスは感じないので続けられると思う。検査値もよくなったので、食べる順番を変えるだけでこれだけ効果があるのかと感心している。HbA1cも下がって先生にもほめてもらえてうれしい。

③A氏の問題点

•炭水化物の摂取量が多い、早食い。アルコールの摂取量頻度も多い。加糖飲料を毎日摂取。
•働き盛りで多忙であり、治療に対する優先度が低い。

④行動変容を起こすうえでのプラス要因

•体重が3か月に30kgと急激に減少したため本人が危機感をもったこと。
•自営業のため、毎食食事は自宅でとることが可能。
•奥様が初回指導に同席され協力的。野菜など食べ物の好き嫌いがない。
•患者は糖尿病の合併症について知識を得てから、重症化を予防したいと前向きである。

⑤3~4回目の食事指導

食事療法のみでHbA1cは12.3%から8.7%(2か月後)、6.4%(3か月後)5.7%(4か月後)に改善、体重は大きくは変わらず(図3)。

A氏:医師から当分の間禁酒を指示されたので、4か月間はアルコールをまったく飲まなかった。妻が毎食野菜料理を作ってくれるので、野菜を食べ終わってからおかずを食べる。ラーメン、唐揚げなど脂っこい物も食べないようにした。