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D-REPORT GUIDANCE

新薬の使用は
安全性を重視して

糖尿病専門医 土井 邦紘 どい くにひろ

土井内科医院 院長(京都府)
日本糖尿病学会専門医
研修指導医
全国臨床糖尿病医会 顧問(前会長)
日本臨床内科医会
学術委員会内分泌・代謝班 班長

最近、新薬としてSGLT2阻害薬が複数使用できるようになりました。
実地医家が使用に際しての留意事項をお教えください。

「夢の薬」、「無理なく血糖を下げる薬」など新聞、医学雑誌などに絶賛されて発売されました。血糖値が下がるのはSGLT2阻害薬により尿管からの「糖」を強制的に排泄させる作用によります。一見、いらない糖を体外に排出させるので合理的な薬かも知れません。また、血糖の低下のみならず、それとともにエネルギーも排出するので体重の減量にも役立ちます。しかし、良いことばかりではありません。糖の濃度の高い尿が多量となり、排尿の回数が増え、尿路感染の頻度が高くなり、高齢者、やせ型の人では脱水を起こす心配があります。さらに、エネルギー代謝の面から肝臓、筋肉への影響も今後出現する可能性もあり、すでに筋肉が痩せる「サルコペニア」が可能性としてあげられています。また、一部では、LDL-Cの上昇、尿酸値の低下、食欲中枢への影響など、まだ未解決な点があり、今後の使用によって、肝臓を含めて糖代謝、蛋白代謝、脳への影響など明らかとなるでしょう。ただし、本剤単独では低血糖の心配はありませんが、インスリン、SU薬との併用に際しては考慮しなければなりません。多くの先生方はDPP-4阻害薬の使用の際にすでに経験されており、同じ過ちは少ないことでしょう。なお、本剤はわが国において現在7種類の発売が予定されていますが、作用については大きな差はないものと思われます。適応としては合併症がない肥満した糖尿患者であり、まず、短期間使用して、その間に情報を集めて次の対策を考えることが安全な使い方と言えましょう。