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症例から学ぶ渡辺内科クリニック(兵庫県)

緩徐進行1型糖尿病患者の
インスリン導入時における
心理と援助

渡辺 伸明 わたなべ のぶあき

渡辺内科クリニック院長
日本糖尿病学会専門医・研修指導医
全国臨床糖尿病医会理事

安原 孝子 やすはら たかこ

渡辺内科クリニック看護師
日本糖尿病療養指導士

2型糖尿病の発症様式を示した症例の中に、緩徐進行1型糖尿病症例が一定の割合で存在する。私たちの検討では2型として治療されていた症例のうち3.6%が抗GAD抗体陽性であった*。2型糖尿病として治療を受けていた患者が、緩徐1型糖尿病と診断された場合、とりわけインスリン療法の受け入れにしばしば困難さを生じる。今回は当院にて経験した症例をもとに、緩徐進行1型糖尿病患者のインスリン導入時における心理状況とそれを踏まえた援助方法について述べる。

①Sさんの生活状況

食 生 活 :夕食が遅く、間食に饅頭など甘味を
     好む。週1回程度友人との外食あり。
運動習慣 :あり(ウォーキング)
社会的背景 :主婦、パート勤務。
       夫、中学生の子どもと3人暮らし

②Sさんが抱える病気に対する不安や悩み

●インスリン注射について、他人に知られることに抵抗感がある。●インスリン手技に不安あり。●1型の病態について十分に理解できていない。●足のしびれを改善したい。合併症が心配。

③ヒアリングから導き出された指導上のポイント

●HbA1cの値について、また合併症のリスクについて説明した。●インスリン注射について基礎的な理解が深まるようパンフレットを渡した。●正確に注射手技ができているか確認し、再指導した。

④Sさんを取り巻く環境など

●娘もまだ中学生で入院はしたくない。●家事と療養が両立できるよう努力している。●インスリン注射について正しく理解すれば前向きに取り組めると思われる。