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D-REPORT GUIDANCE

無自覚性低血糖を
疑うとき

大橋 博 おおはし ひろし

小山イーストクリニック理事長(栃木県)
日本糖尿病学会糖尿病専門医
全国臨床糖尿病医会 副会長

前号の施設紹介で無自覚性低血糖に関する記載がありましたが、どのように診断し、対応すべきでしょうか。

 無自覚性低血糖は、重症低血糖を数カ月以内に起こした方や、糖尿病神経障害の強い患者さん、飲酒後の患者さんなどに見られ、夜間に発生することが多いです。文字通り、自覚するような症状がないので、それを覚知するためには、血糖測定が必須となります。血糖が高くないのに起床時尿ケトン体が陽性、異様な寝汗、いつもと異なる排尿覚醒、朝食前血糖の乱高下(前夜の夕食が過食で翌朝血糖低値、少食で翌朝血糖高値)などは、無自覚性低血糖を疑うべきです。
 治療的診断としては、就寝前のエネルギー補給(牛乳やチーズ+クラッカーなど) による低血糖回避により、間接症状の改善や翌朝の血糖に改善がみられたら、無自覚性低血糖を強く疑います。責任インスリンの減量やSU薬などの薬剤の減量を試みてもよいでしょう。
 最近普及してきたCGM(Continuous Glucose Monitoring:持続血糖測定)は、数分間隔で昼夜を問わず、数日以上持続的に組織間液ブドウ糖濃度(≒血糖)を測定できます。頻回の自己血糖測定とCGMを見比べると、インスリンや多剤併用など、intensiveに治療を行っている患者さんで、低血糖の多くを見逃していることに気付きます。
 糖尿病専門医がいる病院やクリニックなどでは、CGM外来と称して、紹介患者に門戸を開いているところもあります。CGMにより、これまで測定が難しかった血糖の変動を把握でき、より適切な治療への変更が期待できます。