Home>バックナンバー>2015春号TOP>Voice of Registered Dietitian

フリーランス管理栄養士
栄養指導の始まりは1枚のチラシから

玉木 悦子 たまき えつこ

管理栄養士
日本糖尿病療養指導士
神戸学院大学 栄養学部 客員教授

 「腎臓・泌尿器科のクリニック開業のお知らせ」という1枚のチラシから私の栄養指導は始まった。そのチラシには、“栄養士募集”の文字はなかったが「患者さんとの対話を大切にしたい」という文言が書かれていた。腎臓疾患では蛋白・塩分制限が必須項目だが、患者さんにとっては、わかりそうでわかりにくい。だからこそ「私は、栄養指導でお手伝いがしたいのです」とアピールしてから20年以上が経過した。その後、栄養指導を希望する実地医家との出会いが増え、現在5カ所のクリニックと1カ所の病院で栄養指導をしている。
 私が栄養指導を始めたころ、どの先生方も患者さんの治療で、食事療法が大切なことを十分に認識されていたが、限られた診察時間では、詳細な説明やアドバイスをする時間がとれないことを実感されていた。また教科書に書かれているような画一的な栄養指導では、患者さんの治療に結びつかないこともわかっておられた。当時は、私自身も子育てで、学校の授業参観などの行事を大切に生活していた時期で、それぞれの先生とは、栄養指導の日を曜日や時間で決めて実施していた。この間、社会人として再度、栄養学に関するストレスについて大学で学び、米国のジョスリン糖尿病センターの見学に参加、また英国のウェールズ大学医学部では夏季研修で1カ月間、栄養学の勉強もしてきた。その後は患者さんの栄養指導をする一方で、メディアなどを通じて栄養指導や原稿の執筆、あるいは大学での講義など充実して楽しく活動している。
 思い起こせば大学の学部を選択するとき、医師であった祖父母の「薬は病気になってから使うが、食事の栄養は病気を防いでくれる」という言葉で栄養学部に決めた。体は食べ物で作られる。栄養指導で患者さんの病態が改善につながり、患者さんと喜びを共有できることが私のバイタリティーの元である。
 通り一辺倒の栄養指導や薬剤だけに頼った治療は、イミテーションゴールドのように時間がたてば剥げる。適切な栄養指導による毎日の食事からの効果はスローテンポだが、薬の効果と合わさり、本物の輝きを放ち、色あせることがない。
    ※管理栄養士による栄養指導の保険点数は個別指導が130点、集団指導が80点。