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施設紹介杉本クリニック(福岡県)

血糖値に振り回されて
いませんか

杉本 英克 すぎもと ひでかつ

杉本クリニック 院長
日本糖尿病学会専門医
全国臨床糖尿病医会 副会長

杉本英克先生は、糖尿病診療における患者交流・地域連携を大事にされ、
多くの交流会で発起人、世話人をされています。
糖尿病の診療は、医師も患者さんもとかく血糖値に振り回されがちですが、
杉本先生に診療の基本についてお聞きしました。

Q:1100人以上の患者さんを予約制で診察されるそうですが、どのような手順で診察されますか。

杉本:まず看護師が採血の際に、患者さんにHbA1cと血糖値の予測をしてもらいます。患者さんが「今日は、血糖が悪いかも…」と言ったら、どうしてそう思うのかをたずねると、そこからどういった生活をしてきたのか、把握できます。その内容を電子カルテに記載してもらい、その後に私が診察をします。栄養士による食事指導があるときは、それもカルテに記載され、効率よくメリハリをつけて診察します。

Q:血糖以外に検査はされますか。

杉本:毎回尿検査も行います。尿検査は30~40分前の血糖の状態がわかるので、血糖値と両方診ることが大事で、尿検査は外せません。また尿蛋白の有無を確認し、尿蛋白が出ていない人は4カ月に1度は尿中アルブミンを測定します。

Q:管理栄養士のいない施設では、どういった食事指導をしたらよいでしょうか。

杉本:患者さんは、医師にいい顔をしたいので、本当の食生活を言わない可能性もあります。患者さんにとっては、コメディカルのほうが話しやすい場合が多いので、コメディカルに勉強してもらって協力してもらうのがよいですね。
 具体的には図1の食事のポイントに加え、夕食をいかに削るかが鍵となります。夕食を有効に抑えきれる人は体重が減り、血糖の改善が期待できます。ただ、ご飯を減らすとおかずの量が増える人が多いので、メインのおかずで栄養価の高いものを減らすように指導すると成果が出やすいと思います。夜たくさん食べると、寝ている間に脂肪に変わり、なかなか体重が落ちません。

Q:運動療法については、どうですか。

杉本:万歩計は、携帯電話などについていることも多いので、身につけるように積極的に指導しています。運動することの動機付けとして、歩こう会などのイベントを開催して、運動の楽しさを教えてあげることも大切です。私は多忙ですが、週に1回はジムに行って運動をしています。医師が運動をする喜びを知っていると、患者さんにも伝わりやすいです。運動は楽しいからするのであって、それが目的になってはいけません。

図1 食事のポイント

Q:先生はさまざまな臨床研究をされ、クリニックの看護師さんや管理栄養士さんも学会でよく発表をされていますが、研究活動が日常診療に与える効果はどんなことですか。

杉本:私はもともと研究が好きで、基礎研究をやっていました。開業してからは、学問的な興味から臨床研究を行っています。臨床研究のスタンスで患者さんを診ると、また違った面が見えてくることは、医師としてとても大事なことだと思っています。コメディカルも学会発表をすることで、より深く患者さんを診るようになり、観察力がつくようになります。また、学会発表するには研究をまとめなくてはなりませんので、まとめる力や話す力も身についてきます。