Home>バックナンバー>2015春号TOP>施設紹介レポート

Q:研究や活動をまとめることで、先生も患者さんを診る目を磨くということですね。

杉本:そうですね。診療だけを続けていると、診療に慣れていってしまう気が私自身しました。医療に好奇心を持ち、いろいろな側面から診療をするために、臨床研究を続けていきたいと思っています。

Q:先生は、地域で患者さんや医師、診療所・病院などたくさんの交流会(図2)にかかわって活動されていますね。

杉本:土日はほとんど休めませんね(笑)。大変ですが、体力と気力が続く限り頑張りたいです。人的交流がどんどん広がって、それぞれの会で若手が育ってきていますので、その人たちが次の世代を引っ張ってくれると思います。このような交流会は、人材育成の意味も含めて必要なことですね(図2)。

図2 杉本先生が活動される主な交流会

Q:糖尿病の治療には、地域でいろいろと連携をしていく必要があるわけですね。

杉本:これは、糖尿病を診る医師の宿命だと思います。糖尿病を診る際に、“血糖屋”になってはいけないのです。血糖値を良くするだけではなく、合併症を防ぎ、人間の総体を診なくてはいけません。それには、単純なネットワークではなく、視点を変えたいろいろなネットワークが必要です。そうでなければ、患者さんをしっかり診ることができない気がします。ネットワークは1つの組織だけでとどまるのではなく、重なりあって活動していかないと、どの会も発展していかないと思います。

Q:薬物療法に対する先生の基本的な考え方などがありましたらお教えください。

杉本:昔と違って、今のコンセプトはSU薬を中心に考えないということです。いかにSU薬を少なくするか、あるいは使わないで済むようならできるだけ使わないようにします。どうしても血糖が下がらないときにSU薬を使うというスタンスです。私はビグアナイド薬を併用も含めてよく使っています。

Q:日本糖尿病学会では、HbA1cが6%-7%-8%という年齢などの患者の背景を考慮した数値が提案されていますが、これについて先生はどう思われますか。

杉本:私は基本的にはHbA1c 7%未満ということで、指導をします。しかし、この数値は年齢によって変わります。高齢者の場合はHbA1c 7.5%以下、さらに認知症がある場合はHbA1c 8%以下を目標としています。薬剤を使わなくてよい人は、HbA1c 6%以下を目標としますが、薬剤を使ってHbA1c 6%前後にすると、夜間に無自覚の低血糖が起こることがあるので危険です。高齢者では、認知症の原因になる可能性もあり、とくにSU薬使用の患者さんでは危ないので、HbA1c 6%以下にならないようにしています。