Home>バックナンバー>2015秋号TOP>症例から学ぶ

①問題点

・低血糖が多い。夜間低血糖がみられることから、基礎インスリンの過剰が疑われる。

・食事指導がカロリーベースで行われている。カーボカウントを習得していない。

・測定チップの処方制限のため、就寝前の血糖値が十分に測られていない。


②患者および主治医への提案

・基礎インスリン調節の目標は、就寝前(夕食後4時間以上経過)や深夜血糖値を翌朝まで横ばいに推移させること。就寝前と翌朝のペア血糖測定をもっと頻回に行う。

・「応用カーボカウント」を学習し、糖質摂取量に比例して追加インスリンを行うべきだが、まずは糖質量を一定にそろえた食事「基礎カーボカウント」から始める。

CGM(持続血糖測定)を実施し、普段の生活での1日を通じた血糖変動を把握する。

・1型糖尿病の場合、月120枚まで測定チップの血糖自己測定器加算区分がある。最低でも毎月120枚の処方を依頼する。

①外来CGM
提案に従って、CGMが行われた。その結果に対する主治医の指導内容は以下の通り。

・朝の血糖値は150mg/dL以上の日が多いため、デグルデクは就寝前14単位に増量。

・朝食後の血糖値はよく抑えられているが、昼・夕食後の血糖変動が大きいため、食事指導を再度徹底。また夕食後の血糖上昇が大きいため、アスパルトは8単位に増量。


②CGM実施後の経過

・HbA1cは8%台で変わらず、以前にも増して低血糖に悩まされるようになった。

・結婚を機に当院へ転院。

①前医のCGMデータを元に、当院では以下のような指導を行った

・基礎インスリン:毎晩就寝中に血糖が下降しており、基礎インスリンが過剰。デグルデクを8単位に減量。暁現象(深夜に分泌される成長ホルモンの作用により、早朝に血糖値が高くなる現象)は起きていないため、就寝前から翌朝にかけて血糖値が±30㎎/dL以内の変動に収まるよう調節する。

・追加インスリン:応用カーボカウントを指導して調節する。

・基礎インスリン、追加インスリンともに1回の注射量が10単位未満のため、インスリンをカート製剤に切り替える。注入器は0.5単位刻みで調節可能なノボペンエコー™を処方。