Home>バックナンバー>2016春号TOP>症例から学ぶ

 脂肪細胞の量が多い患者では、チアゾリジン薬のピオグリタゾンが少量の処方でも有効であることが多い。肥満患者に見られるDPP-4阻害薬の効果低減では、3.75㎎のごく少量から併用を開始すると、体重増を来さず、ある程度効果を改善させることが可能である。

 SGLT2阻害薬は少量から開始し、忍容性を確認して増量する。食欲が亢進するケースが多いため、デュラグルチドなどのGLP-1受容体作動薬との併用も効果的である。CGMを見ると、併用により血糖コントロールが平坦化している。症例によっては単剤でも血糖値を平坦化し得る。
 デュラグルチドは、週1回投与のため外来で導入しやすく、注射器具も改善されており外来で簡単に指導ができる。薬価が高くなる問題はあるが、非常に有効で、改善が見られればGLP-1受容体作動薬から中止する。

 本症例では、今後日本滞在中のデュラグルチドを継続するか、ウィーンの医療機関ではリラグルチドに変更してGLP-1受容体作動薬を処方してもらうかを検討中である。
 ウィーン滞在時にコントロールが悪化しがちであるため、国際電話での指導や、妻が時々日本に帰国する際に、面談し処方を受けるなどの方策も考慮したい。


1) David M.Nathan,etal. Diabetes Care 2008;31:1473
2) 田原保宏ほか. 糖尿病1994;37:565-572