Home>バックナンバー>2016春号TOP>ナースの目

ナースの目

コーチングで展開する
療養指導③ (最終回)

糸藤 美加 いとふじ みか

大石内科クリニック(京都府)
看護師歴23年
日本糖尿病療養指導士歴14年
旧国立京都病院糖尿病センター勤務7年
大石内科クリニック勤務11年

 長年糖尿病療養支援をしていると、さまざまな壁にぶつかります。
 私が新人の頃は「支援」というより「指導」が中心で、患者さんを「指導」すれば治療はうまくいくと考えられていました。患者さんに知識がついたかが重要だったのです。
 しかし、糖尿病の治療は知識を与えるだけでは十分でなく、患者さんの気持ちがどう変わったかや、病気の受容が重要といわれるようになってきました。
 これまでも、患者さんの受容や行動に着目して関わっているつもりでしたが、行動変容が困難であったり、抵抗されるケースに遭遇することがありました。「うまく支援できなかった」という自責の念や、「どうしてわかってもらえないのか」という葛藤を常に抱えていました。
 そんなときに、コーチングに出会いました。自分の内側にある「正しい知識を持つべき」や「私が指導すれば良くなるはず」といった「枠組み」という概念を知ることで、私は変わることができました。人それぞれに「枠組み」があり、違いがある。違いがあって当たり前。そのことに気付き、私の「枠組み」を脇に置くことで、患者さんの思いを素直に聞き取り、共感できるようになりました。

 以前であれば、諦めたりイライラしたりする場面でも、感情に振り回されなくなりました。感情にとらわれず、患者さんのありのままを受け入れると、患者さんから抵抗されることが減ります。その結果、療養支援がスムースとなり、支援の効率や効果が高まっているように感じています。
 これからもより良い療養指導が提供できるように、コーチングを通して成長し続けたいです。