Home>バックナンバー>2016春号TOP>施設紹介レポート

 せいの内科では、治療がうまくいかない患者に対し、療養指導とは別枠に、傾聴を主としたカウンセリングを実施している。「カウンセリングでは、こちら側からは何も指導や説明をしません。日常生活はどうか、血糖コントロールがうまくいかないのはなぜか、などの質問を投げかけ、療養指導士は聞き役に徹します。患者さんは、自分の思いを医療者に訴えたいのです。こちらが話を聴き、共感してあげるだけでも、『あぁ、この先生は、私の気持ちをわかってくれた」と患者さんは楽になります」。患者に接する際は、のような対応を心がけたい。

 声のかけ方1つでも、患者の反応は大きく変わる。「これはコーチングのテクニックの1つですが、『なぜできないのですか』ではなく、『良くするためにはどうしたらいいと思いますか』『血糖値を10mg/dL下げるためにはどうしたらよいと思いますか』など、ポジティブな言葉を使って、診療を進めていきます」。
 近年、コーチングやカウンセリングの他、認知行動療法やエンパワーメントなど、患者の『心』に着目したさまざまな手法、テクニックが理論として確立されてきている。心理的なアプローチの研究会は、各地で数多く開催されている。実地医家の先生方、コメディカルスタッフの方々も、こういった勉強会に参加してみてはいかがだろうか。
 民間療法にはまる患者の心のうちには、医療や薬剤への不信感が潜んでいることが少なくない。大切なのは、そのような患者の本音に寄り添うことだと、清野先生は語る。患者の思いに耳を傾け、その上で気付きを促す質問、ポジティブな言葉かけを行い、患者自身の持つ『良くなる力』を引き出していきたい。

参考
清野弘明,朝倉俊成.糖尿病治療 療養指導ゴールデンハンドブック.第2版.南江堂2013