Home>バックナンバー>2016夏号TOP>>症例から学ぶ

症例から学ぶ糖尿病内科・内科 かわさきクリニック(大阪府)

糖尿病患者で癌を疑う症例

糖尿病患者では、
癌の発症リスクが高いことが知られている。
癌を見逃さないために、
日常診療で気を付けるポイントを解説する。


川崎 勲 かわさき いさお

糖尿病内科・内科
かわさきクリニック 院長
日本内科学会認定医、
日本糖尿病学会専門医・
研修指導医

 糖尿病治療の目標は、合併症の予防と、健康寿命を確保すること1)である。そのためにも、慢性疾患である糖尿病患者は、定期的なクリニック、病院への受診が欠かせない。日常診療では、血糖・脂質・血圧・体重のコントロール状態をチェックし、管理栄養士とともに食習慣の見直しを話し合ったり、薬物治療の方法を検討したり、あるいは、血管合併症の精査や下肢病変の予防のためのフットケアを行うが、さらに癌のリスクを十分に考慮すべきである。
 近年、糖尿病患者の死因は、血管合併症よりも癌が多く、糖尿病患者には、癌の発症リスクが高いことが、日本人においても報告されている2)。癌を早期発見するために、日常診療での留意点を述べる。

 Aさんは、この1年で約1㎏の体重減少を来したが、食欲もあり、随時血糖132mg/dL、HbA1c 6.6%と血糖コントロールも良好であった。しかし、Hb12.2g/dLの貧血とγ-GTPが134 IU/Lと高値を認めた(AST28 IU/L、ALT13 IU/Lは基準値内、HBs抗原陰性、HCV抗体陰性)。これらの異常値をさかのぼると、Hbは前々回受診時までは14〜15g/dLで推移していたのが、前回受診時に13.8g/dLに減少していた。γ-GTPは前々回受診時までは、40〜50IU/Lで推移していたが、前回受診時に120 IU/Lまで上昇していた