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極める! くすりと療養指導

糖尿病薬の考え方と
シックデイ①(3回連載)

井上 岳 いのうえ がく

北里大学薬学部 薬物治療学Ⅲ

近年、作用機序の異なる種々の糖尿病薬が開発され、副作用回避の点からも、
シックデイへの対応が重視されている。
本稿では3回シリーズで、シックデイ時の対処法を中心に、
糖尿病薬の考え方について解説する。

 シックデイ(sick day)とは一般に、「糖尿病患者が発熱や下痢、嘔吐が出現することによって血糖コントロールが著しく困難に陥った状態」を指す。しかし、糖尿病薬の増加に伴い、糖尿病患者のみならず、医療者ですら、薬剤ごとに異なるシックデイ対応を完全に理解しているとは言い難い。

 シックデイへの対処を学ぶために、まず本稿では糖尿病薬の考え方の基本を述べる。

血糖コントロール目標は
 HbA1c7%だけではない

 血糖コントロール目標は、に示す通り、糖尿病合併症の発症・進展を予防する観点からはHbA1c 7.0 %未満を目指す。
また対応する血糖値として空腹時血糖値130 mg/dL未満、食後2時間血糖値180 mg/dL未満をおおよその目安とすることが推奨されている。しかし糖尿病の治療目標は、かつてのようにただ下げれば良いと、画一的にHbA1c 7.0%未満を目指すのではなく、患者の年齢や罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性や家族のサポート体制などを考慮し、HbA1cを「6%・7%・8%方式」で個別に設定する。