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 2型糖尿病患者702人を24カ月間フォローアップし、悪性腫瘍の発症について検討したところ、42人(6%)の患者で、組織学的に悪性腫瘍と診断された。診断群と非診断群の2群で臨床データを比較すると、診断群では非診断群に比し、癌の種類にかかわらず有意に、高年齢で、糖尿病罹病歴が長く、BMIと貧血の指標であるHb値が低いとの結果だった。

 また、カプランマイヤー法にて、Hb<13g/dL群とHb≧13g/dL群で、癌の累積診断率を解析すると有意な差を認めた3)。本症例でも、Hb値の低下を認めていることから、日常診療でのHb値とそれまでの経過には注意が必要であると考えられた。

 日本人糖尿病患者に多い癌として、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、大腸癌、乳癌、子宮内膜癌、膀胱癌があげられており2)、これらの癌を常に想定して日常診療を行っていきたい。

参考文献

1)日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド2006-2007, p21

2)Kasuga M, et al, Report of the Japan Diabetes Society/Japanese Cancer Association Joint Committee on Diabetes and Cancer. Cancer Sci. 104(7), 2013, 965-76.

3)川崎 勲, 第39回DM net ONE 症例検討会, 大阪市立総合医療センター, 2013年9月12日にて発表



①高齢者

②糖尿病罹病歴が長い

③食欲があるのに、体重減少を来している

④検査結果の推移をチェックし、
 異常な変化がある

⑤Hbが低値である

⑥糖尿病患者に多い癌を常に想定する