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家族の協力に勝る療養なし

 続いて、カロリーコントロールにより、受診後半年でHbA1c 10%超から、5.8%へ改善した2型糖尿病のSさん(63歳)の講演があった。

 Sさんは「子どもの頃から野菜が苦手だったが、妻の手料理のおかげで、63歳にして初めて野菜のおいしさに目覚めた」と妻に対する感謝を語った。糖尿病療養における家族の役割の大切さが、あらためて実感された。

 その後、演者の患者さん・参加者全員が10人程度に分かれ、グループディスカッションが行われた。宿泊用の部屋で座卓を囲み、くつろいだ雰囲気の中、活発な意見が交わされた。

 あるグループには、演者として登場した患者のSさんとともに、Sさんの療養を支える妻も参加。調理におけるさまざまな工夫や、野菜料理のバリエーションについて話され、看護師や栄養士からも「ヘルシーで飽きない料理をするコツはありますか?」などの質問があった。患者とその家族に直接生活改善の工夫や苦労を聞く機会はなかなかなく、参加した医療スタッフには貴重な経験となったようだ。

医療スタッフの本音

 一般的なグループディスカッションや症例検討会では、互いに反省点を指摘したり、改善に向けてのアドバイスなどが行われたりする。しかし、本研究会では、職種や立場、経験の異なるさまざまな参加者が安心して意見を言えるよう、反論や批判を行わず、傾聴・受容を基本とした、ナラティブなコミュニケーションを原則としている。職場や病院では話しにくいこともポロリともれ、「普段感じていることを話し合うことができた」などの感想が聞かれた。
 患者さんを含めた参加者全員が、療養生活や指導の難しさ、やりがいについて、同じ視線で語り、数多くの気付きや発見があった。以下、一部を紹介する。

※ナラティブ : 患者が語る物語

「こちらをうかがうような緊張した表情で来た患者さんが、関わりを通して、最後は晴れやかに、『来てよかった』と帰ってもらえたときに『よし!』と感じる。それが私のパワーに」(医療スタッフ)
「中断していて、久しぶりにひょっこり顔を出してくれた患者さん。帰って来てうれしい。薬剤師も、もっと積極的にこのような会に参加してほしい!」(薬剤師)
「病気をみるのではなく、糖尿病の“人”をみなければと思った」(医療スタッフ)
「TVで“○○が良い”と言うと、それがすべてを良くしてくれると思い込み、他のことがおろそかになり、かえって血糖コントロールが乱れる患者さん。がっかりしている姿を見て、どう声をかけたら、追い打ちにならないか悩む」(看護師)
「自分より倍の人生を生きている患者さんを指導することに、とても申し訳なく思い、やりづらいときがある。若輩者の自分に指導される患者さんは、何を思うのだろうか」(管理栄養士)
「調剤薬局では処方箋からは、病状が何も見えてこない。通り一辺倒の服薬指導しかできないことに葛藤がある」(薬剤師)