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シックデイ時における
糖尿病治療薬とインスリン療法の対応

  シックデイとは、一般に糖尿病患者で発熱や下痢、嘔吐が出現することによって、血糖コントロールが著しく困難に陥った状態をいう。シックデイのため食事ができず、食事量が不安定な状態では、低血糖を回避するために糖尿病治療薬の減量や中止が必要となる()。
 具体的な対応については、事前に医師の指示を確認することが望ましい。

 チアゾリジン薬を除き中止する。α-GIやBG薬は、消化器系への影響、またSGLT2阻害薬は、ケトン体を上昇させ、SU薬やインスリンとの併用で低血糖を生じやすいため、必ず中止とする。なお、食事量が通常の半分以下であればチアゾリジン薬も服用を中止する。

 食事量によって対応が変わる。食事量が通常の2/3以上であれば、通常量を服用。SU薬や速効型インスリン分泌促進薬は、食事量が半分程度であれば服用量も半分に、1/3以下であれば服用を中止する。DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬は食事量が半分以下あるいは、下痢や嘔吐など消化器症状のあるときは中止する。
 いずれの場合も、血糖自己測定値を参考にしてインスリン療法への切り替えが必要となることもある。

 シックデイ時のインスリン療法は、患者ごとに異なるので、必ず医師から具体的なインスリン投与量などの指示を受ける。代表的なインスリン療法の原則は、以下の通りである。

*basal-bolus療法を行っている2型糖尿病
 内因性インスリン分泌が枯渇している場合が多いため、基礎インスリン(持効型溶解インスリン、中間型インスリン)は、全く食べられないときでも原則として減量しない。追加インスリン(超速効型インスリン、速効型インスリン)は、食事量および血糖自己測定値に応じて増減する。食欲が低下している場合は、食直後に食事量を把握した上で、超速効型インスリンを食直後に注射することも考慮する。

*混合型1日2回注射
 食事量や血糖自己測定値に応じて増減する。

*持効型溶解インスリンのみ
 持効型溶解インスリンの量は原則として減量しない。ただし、食事が全く摂れない場合には、低血糖を回避するため医師の指示により中止することもある。

 シックデイの対処は、まず最初に患者自身で対応する必要がある。次号では、患者に指導するべきシックデイルールを中心に解説する。