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糖尿病REPORT ~最新の研究より~

喫煙と糖尿病 「確実」に関係
~15年ぶりの改訂「たばこ白書」より~

 厚生労働省は2016年8月、たばこの健康被害に関する報告書、いわゆる「たばこ白書」の改定案をまとめた。白書の改訂は15年ぶりで、喫煙と病気の因果関係を初めて4段階で評価。喫煙者は非喫煙者と比較して、肺、咽頭、食道などのがんや心筋梗塞、糖尿病、歯周病にかかりやすいことについては、“科学的証拠は因果関係を推定するのに十分である『レベル1』”であり「確実」と報告した。

 わが国の能動喫煙による死者は約500万人/年、受動喫煙では約1万5千人/年にものぼる。日本の受動喫煙対策は世界で『最低レベル』と判定され、屋内の全面禁煙を目指すべきとの提言がまとめられた。

 喫煙は炎症や酸化ストレス、内皮機能障害を引き起こし、耐糖能を悪化させる可能性がある。また、2型糖尿病患者を対象とした臨床試験では、ニコチンがインスリン抵抗性を惹起し、加えてニコチンが膵β細胞のニコチン受容体へ作用し、インスリン分泌を低下させることも報告されている。
 また、近年は無煙たばこ(かぎたばこ)や電子たばこなど、新しいたばこ製品が流通している。無煙たばこは、海外、特に西欧で発がん性があると判定されており、日本人においても、がんとの因果関係は「確実」とされる。

 一方、電子たばこは、普及してまだ間もないことから、「因果関係の有無を推定するのに不十分である」とした。

 しかし、電子たばこの蒸気から、各種カボニル類などの発がん性物質の発生が報告されており、曝露によって健康影響を受ける可能性がある。

 白書では禁煙についても言及。保険を使った禁煙治療や、ガムやパッチなどの禁煙補助薬(OTC) の有効性はすでに確認されており、自力での禁煙に比べて、成功率が3~4倍高まるといわれている。

 禁煙は長期的には糖尿病リスクを減少させるが、一時的に体重増加や、血糖コントロールの悪化を招きやすい。禁煙実施においては、患者個々の背景に合わせた、適切な介入を心がけたい。

厚生労働省「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」 (http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000135586.html)より