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極める! くすりと療養指導

糖尿病薬の考え方と
シックデイ②(3回連載)

井上 岳 いのうえ がく

北里大学薬学部 薬物治療学Ⅲ

前号に続き、“インスリンの作用不足”という観点から糖尿病用薬を分類し、
治療薬別のシックデイ時における対処法について解説する。


病態に合わせた薬物療法

 2型糖尿病を“インスリンの作用不足”の病態と考えると、糖尿病治療薬は、以下のように分類することができる。

 一番効果的な治療法は、食事・運動療法であるが、達成率は高くなく、患者にとって、負担が大きい。

 薬物療法としては、「インスリン抵抗性改善系」と「糖吸収・排泄調節系」が挙げられる。空腹時血糖値の高い場合や、肥満を合併している患者には、BG薬が選択される。SGLT2阻害薬を服用する患者には、尿量増加に伴う脱水を予防するため、水またはお茶を普段より1日500~1000 mL程度多く飲むように指導する。尿路・性器感染症や薬疹、発疹、掻痒感、紅斑など皮膚症状にも注意する。

 内因性のインスリン分泌能が低下している状態では、「インスリン分泌促進系」の薬剤が選択される。DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、あるいはSGLT2阻害薬をSU薬と併用する場合には、低血糖のリスクが増加するため、SU薬の減量を検討する。

  インスリン治療としては、健常時の内因性インスリン分泌パターンを再現しやすいInsulin basal-bolus療法が望ましい。症例によっては、インスリン治療と他の薬剤との併用も考慮する。糖毒性により内因性インスリン分泌能が低下した患者では、インスリン治療の導入により、糖毒性が解除され、経口血糖降下薬のみに変更できる場合がある。