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Q:問診内容や診断上のポイントは何でしょうか。

伊藤:私が活用しているのは、厚生労働省が発行している「生活習慣病 療養計画書」を使って、患者さんに問診することです。初診用と継続用の2種類があります。この問診票を使ってチェックしていくだけでも、生活習慣の指導はかなりできると思いますが、内容的には栄養士がいるとスムーズにチェックできます。
 また診察のポイントとしては、まず足を診ることです。当クリニックの患者さんは、皆さん靴下を脱いで待合室で待っています。足をみれば、糖尿病性壊疽や水虫などもわかりますし、むくみがあれば心臓や腎臓、肝臓の状態も知ることができます。一番大切なことは、患者さんに触れることです。パソコンに目がいきがちですが、患者さんの目を見ながら話し、スキンシップが大切です(写真2)。

写真2 むくみのチェック

Q:検査項目としてはつねに何をチェックしていますか。

伊藤:血糖と尿糖、HbA1cの3つは最低でも必ず毎月チェックしています。血糖は随時血糖で構いません。その検査結果をきっかけに、低血糖があったかどうかや車の運転の有無、あるいは最近のニュースなどを話題にしてその対応から認知機能を診るなど。いろいろと患者さんとお話をしてはどうでしょうか。

Q:患者さんの病態変化でとくに注意したいことは。

伊藤:一番気をつけることは、短期間の体重減少です。1か月に3~4Kgも体重が減るのは、相当重症です。それと尿糖、ケトン体ですね。尿糖、ケトン体は誰でも測定できます。また、いま問題になっているのは、若年層の清涼飲料水ケトーシス(ペットボトル症候群)です。当クリニックでも随分経験しています。インターネットなどに夢中になり、ほとんど体を動かさないで清涼飲料水を多飲し、肥満になり、初診時に血糖値が500mg/dLを超えているということがあります。

Q:実地医家が簡単に指導できる栄養指導や運動療法はありますか。

伊藤:細やかな栄養指導はむずかしいかもしれませんが、たとえば一番簡単なのは、「20回噛みましょう」と指導することです。20回噛むことが、本当に実践できれば食事療法は大丈夫です。20回も噛んでいると、食事の途中で満腹になりますし、自然に食事量が減ります。また、自分の歯がいかに大切かよくわかります。
 運動療法に関して、まず患者さんがどんな運動をしているかたずねてみます。簡単な運動としては、万歩計を使って1日1万2,500歩を目標に歩くように指導します。その際、患者さんに歩くことを強要するのではなく医師自ら「私は今日〇〇歩、歩いてきましたよ。○○さんは、何歩になりましたか。」などともちかけます。医師が運動を率先することで、患者さんに寄り添い、運動療法のモチベーションをあげるのです。

Q:伊藤先生は「NPO法人西東京臨床糖尿病研究会」を立ちあげて糖尿病の医療連携システムを構築されています。どのくらいの頻度で活動されていますか。

伊藤:この研究会は設立されて27年になりますが、3日に1回は西東京のどこかで糖尿病の勉強会が開催されています。参加者は医師をはじめ看護師、栄養士、運動療養指導士の皆さんが多いですね。

Q:参加者は糖尿病専門施設のスタッフが多いのですか。

伊藤:専門施設のスタッフは多いですが、クリニックの先生やスタッフの皆さんもほぼ30%を占めて熱心に勉強されています。特にこの研究会では、栄養士の派遣紹介活動を行っています。大きな病院では施設内で栄養指導が可能ですが、実地医家ではなかなかそこまでできません。この栄養士派遣事業を活用すれば、実地医家でも定期的に栄養士による栄養指導を行うことができるのです。西東京の栄養士のレベルは非常に高く、派遣事業だけでなく糖尿病料理教室や試食会なども行い、当クリニックの患者さんたちも参加しています。