Home>バックナンバー>2014夏号TOP>施設紹介レポート

Q:実地医家の先生方にはどのような勉強会をされているのでしょうか。

伊藤:糖尿病専門の先生を呼んで日曜日などに、終日、実地医家15~20人に講義を行います。例えば、インスリンの自己注射の指導について1日かけて勉強しますが、これは有料の勉強会です。また、看護師や栄養士などの地域糖尿病療養指導士(LCDE)も500~600人おりますが、LCDEを対象に設立当初から勉強会を開催しています。この地域はもともと大学病院がなかったため、実地医家レベルの勉強会が活発になった経緯があります。開業医目線なので皆さん参加しやすいようです。

Q:実地医家の先生方にもできる診療連携とは何でしょうか。

伊藤:まず、一番大切なのは眼科との連携です。すぐにはむずかしいかも知れませんが、まず、初診の患者さんには眼科を受診してもらいます。眼科にもそれぞれ専門があるので、糖尿病を専門とした施設が望ましいです。網膜症の進展予防にレーザー光による光凝固治療の経験があるかどうかというのは、連携を考えるうえで参考になると思います。
 2番目には栄養相談です。栄養相談はとても大事ですが指導されていないことが多いですね。食事療法をしないで、すぐに薬を処方する傾向がありますので、栄養士の派遣事業を利用することが非常に大切です。3番目には腎臓専門医との連携です。腎臓に関しては、検査値でわかりますから、悪くなれば腎専門医に紹介します。

Q:診療連携に積極的でない実地医家にはどのようにその必要性をアピールされていますか。

伊藤:非専門の医師が患者さんを抱え込みすぎて失明や腎不全などの合併症に至った場合、医師が訴えられる可能性があることを常に意識しなくてはなりません。診療連携は、患者さんのためだけでなく医師にとってもそうした問題を回避するために重要であると考えています。

Q:糖尿病治療薬は、どのように選択し、使用すべきかアドバイスをお願いします。

伊藤:DPP-4阻害剤は、低血糖も少なく使いやすい薬ですが、やはり根本療法である食事・運動療法をきちんとしていないと、血糖値が上がってきます。これは、“6か月現象”といい、最初は薬によって血糖値が下がるのですが、食事・運動療法をしないと半年ほどして、また血糖値が上がってくる現象が見られます。いくら良い薬剤が出てきても食事・運動療法が大切です。
 非専門の医師が薬剤を選択する際には、作用機序の異なる3種類の薬(DPP-4阻害剤, BG剤, SUの少量剤/アマリール0.5か1.0)から1薬剤ずつ選んで使い慣れることがよいと思います。グリニド薬・α-グルコシダーゼ阻害薬なども非常によい薬で専門医はよく用いますが、患者さんによっては不規則な生活の方もいらっしゃるので、1日3回食直前投与を守るのはむずかしい場合があります。

Q:高齢者の診療で特に注意している点を教えてください。

伊藤:次の3点をチェックしています。
①腎機能
②合併症の有無
③ライフスタイル
 腎機能のチェックですが、腎機能が落ちていると、思わぬ副作用が起きることがあります。例えばBG剤は使えません。また、DPP-4阻害剤でも腎機能が落ちていると使えないものがあります。
 合併症の有無についてですが、複数の薬を服用していることがあるので確認が必要です。お薬手帳を必ず持参してもらい確認してください。
 ライフスタイルのチェックですが、これは患者さんの家庭環境を知ることです。独居老人かどうか、認知症などの老々介護ではないか、生活習慣やその家族構成などを知ることが大切です。そういった意味で、かかりつけ医がぜひ糖尿病を診察すべきです。かかりつけ医は、地域に根付いた診察で患者のバックグラウンドをよく知っていることも多く、糖尿病の治療に適しているわけです。