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 メトホルミンの一つであるメルビン®は、現在メトグルコ®として発売されている。違いとして、一日の最大投与量が増えただけではなく、禁忌項目(詳細な内容は添付文書参照)も緩和されたが、やはり副作用、特に頻度は低いながらも乳酸アシドーシスに留意する必要性は変わらないと考えられる。
 乳酸アシドーシスは、予後不良で死亡例も報告されており、迅速かつ適切な治療が必要となる。BG薬投与における乳酸アシドーシス発症例で多く認められたケースは、1)腎機能障害患者(透析患者も含む)、2)過度のアルコール摂取、シックデイ、脱水など患者への注意・指導が必要な状態、3)心血管・肺機能障害患者、手術前後、肝機能障害患者、4)高齢者、などの特徴が認められた。さらに、比較的若年者でも少量投与で、上記の特徴を有する患者にも認められている。これとともに、「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」によるBG薬の適正使用に関するRecommendationが出されている。BG薬を使用する際には、ぜひ目を通して頂きたい。
 経口摂取が困難な患者や寝たきりなど、全身状態が悪い場合には投与をしないことを前提とし以下の点に留意する。
 メトグルコ®を除くBG薬では、腎機能障害患者には禁忌であるが、メトグルコ®は中等度以上の腎機能障害患者が禁忌である。具体的には、SCr値(酵素法)が、男性1.3mg/dL、女性1.2mg/dL以上の患者には投与を推奨しない。また、高齢者はSCr値が正常であっても、腎機能低下が見られることがあるためeGFRなども考慮して投与の是非を検討する必要がある。
 全てのBG薬は、脱水、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐などの胃腸障害、過度のアルコール摂取の患者は禁忌である。高度の心血管・肺機能障害、外科手術(飲食物の摂取が制限されない小手術を除く)は禁忌である。メトグルコ以外のBG薬は、肝機能障害は禁忌であるが、メトグルコは軽度~中等度の肝機能障害において慎重投与である。
 メトグルコを除くBG薬は高齢者に禁忌である。メトグルコは慎重投与だが、高齢者は肝腎機能が低下していることが多く、投与量の調節や、副作用の確認をしていく必要がある。75歳以上では原則として新規の投与は推奨しない。

 添付文書上の用法は、食直前または食後となっている。インスリンなど食直前投与の薬があり、用法が複雑になることで飲み忘れが懸念される場合は、どちらかに統一することで、飲み忘れが改善することもある。飲み忘れた場合、食事との間隔が空いてから服用しても、単剤であれば低血糖のリスクは低い。しかし、他の糖尿病薬と併用している事も多く、薬による飲み忘れの対応が違う場合もあり、覚え切れないケースもある。当院では、インスリン併用時の打ち忘れも加味し、気づいた時点が食後1時間以内であれば服用するよう指導している。但し、薬の必要性および一定の時間に服用する必要性をきちんと説明し、あくまでも飲み忘れた場合の対応であると指導する。
 副作用である下痢、軟便などの消化器症状は、投与初期・増量時に見られ、患者からの質問も多い。体が慣れてくると1~2週間で症状が治まってくること、整腸剤も併用する場合もあると説明することで、コンプライアンスが維持できる。
 シックデイ(かぜや下痢などの病気で食事が取れない時)、高齢者、腎機能障害患者における脱水には注意を要する。場合によっては、服薬を中止するなどの指導を行なう必要もある。
 過度のアルコール摂取についても乳酸アシドーシスの危険性が高まるため、注意が必要である。また、高齢者や腎機能障害患者においても、過度のアルコールは避けた方がよいため、患者に理由をきちんと説明することが重要と思われる。