
土井 多種多様な糖尿病治療薬があるなかで、高齢者の薬物療法はどのように進めていくべきでしょうか。
横野 高齢糖尿病患者の薬物療法に関するステートメントはまだありませんが、特に高齢者では血糖の日内変動をなるべく小さく抑え、低血糖を回避しながら血糖を目標値にコントロールしていくことが望まれます。今回の調査結果から、インスリンもSU薬もDPP-4阻害薬を併用することで低血糖が少なくなることが示されたことを考えると、高齢糖尿病患者の薬物療法は今後、DPP-4阻害薬を中心に進んでいくだろうという印象をもちました。そのなかでも、多くの使用経験が蓄積されている薬剤が実臨床では使いやすいかもしれません。また、認知症やうつなどの合併により服薬アドヒアランスが低下しがちな高齢者では、1日1回投与のDPP-4阻害薬が特に有用ではないでしょうか。
土井 最近、sodium glucose cotransporter(SGLT)2阻害薬という新たな選択肢も加わりましたね。
福田 SGLT2阻害薬は血糖低下に加えて体重減少をもたらすことで、大きな期待が寄せられています。しかし、高齢者ではメタボ体型の元気な方にはよいかもしれませんが、フレイルやサルコペニアのある方の場合には使用を避けるべきでしょう。単に年齢で判断するのではなく、患者個人の特性を見極めたうえで注意して使用していかねばならないと思います。また、脱水や女性での性器感染症・尿路感染症への注意も必要です。
横野 皮疹などの副作用への留意も必要ですね。新規薬剤ですから、慎重に使用経験を重ねるべきだと思います。
土井 本日は、高齢者糖尿病の特徴および糖尿病治療での低血糖の状況を中心にお話を進めてきました。日本臨床内科医会では、今回の患者実態調査に続き、現在、DPP-4阻害薬の使用実態と治療成果を調査研究するSMILE STUDYを開始しています。1万例のデータ集積をめざし、現在約7000例の登録が終了したところですが、この研究により高齢者糖尿病のよりよい診療に向けた貴重な情報が得られるのではないかと期待しています。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
PROFILE
土井邦紘
兵庫県立神戸医科大学(現 神戸大学)卒業。カナダ・トロント大学生理学ベスト医学研究所留学、神戸大学講師(第二内科学講座)、神戸大学医学部代謝機能疾患治療部(第二内科)助教授などを経て、平成4年8月に土井内科を開設。京都大学医学部非常勤講師も務めた。専門は糖尿病。
横野浩一
神戸大学医学部卒業後、同大学第二内科入局。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校附属細胞生物学研究所留学、神戸大学大学院医学研究科老年内科学教授、同大学理事・副学長などを経て、平成25年10月より北播磨総合医療センター病院長。日本糖尿病学会理事、日本老年医学会理事なども務める。専門は高齢者糖尿病の治療と管理。
福田正博
滋賀医科大学卒業後、大阪大学第四内科入局。米国・ハーバード大学ジョスリン糖尿病センター留学、豊中渡邉病院内科部長などを経て、平成8年11月にふくだ内科クリニックを開設。大阪府内科医会会長、近畿大学内分泌・代謝・糖尿病内科非常勤講師、大阪府医師会生涯教育委員会委員長などを務める。専門は糖尿病。