Home>バックナンバー>2014秋号TOP>施設紹介レポート

Q:食事の適量を計算し、指示できるわけですね。

福田:適切なカロリーを摂取することが一番大事ですが、食事量というのはなかなか言葉で説明されても実感できません。そこで適切な食事量を体験してもらうことが大切です。
 最近はコンビニ弁当やファミリーレストランのメニューにもカロリーは表示されています。糖尿病向け宅配弁当も多数出ており、非常にポピュラーになりましたから、一度試してみるのもよいと思います。

福田:当クリニックでは、食事指導するにあたって、糖尿病患者さん向けの宅配弁当をとって、ときどき試食します。実際に、おいしいかどうかや栄養バランスなどをみて、「これは、おいしかったよ」などと患者さんに勧めています。自分が試食もしないで勧めるわけにはいきません。私が食べておいしいと思っても、患者さんはおいしくないというケースも多々あります。これは、宅配弁当が減塩に配慮して調理しているため、濃い味になれた患者さんには、おいしくないと感じるわけです。業者によっては、だし成分をしっかり使い、減塩しながらおいしいお浸しなどを調理しているところもありますが、患者さんに勧めると「あれは、味が薄くて…」と言われるのです。こうした患者さんは、味覚がだいぶ落ちているなとわかります。糖尿病で血糖コントロールの悪い方は、味覚、特に甘味に対する閾値が落ちている可能性が高い。しかし、きちんと治療をしていくと、味覚も改善し、以前に食べていたものを「こんなに味の濃いものを食べていたのですか」と言われる方もおります。

Q:先生が試食をすることで、ご自身がスタンダードとなり、患者さんの味覚の状態などを把握できるのですね。

福田:医師もある程度は患者さんの食事療法を実践すると患者さんの意識も変わってきます。

Q:本紙の前号(夏号)施設紹介でも、先生が率先して歩き、患者さんに「私は、今日○○歩歩いたよ。□□さんは、何歩ですか」と診察時に声をかけられるそうですが、医師が自ら実践することが大切ですか。

福田:そうです。それが一番大切ですね。宅配弁当もそうですが、日常の私の朝食を患者さんに実際にモニターで見ていただいて、メニューを紹介します。治療のための指導というのではなく健康的な生活習慣を主治医の私と一緒にがんばりましょうというスタンスで診療しています。(写真)。

写真 先生ご自身の朝食メニューをモニター画面で患者さんに説明

Q:実地医家では栄養士がいないところもあり、きめ細かい食事指導は難しいと思いますが、栄養士とコンタクトできる方法などはありますか。

福田:栄養士の資格をお持ちなのに、仕事に活かしていない方が多いと思います。2008年から特定保健指導が始まって栄養士が活躍する場が増えたのですが、まだまだ少ないのが現状です。
 地域によっては、医師会が栄養士会と協力して、クリニックに栄養指導に来てもらっているところもあります。またクリニック同士で協力して、栄養士と契約して栄養指導をしてもらうことを検討してはどうでしょうか。コメディカルに協力してもらい、クリニックで食事の具体的なメニューを提案することも考えられます。糖尿病食の宅配をうまく活用するのもよいでしょう。
 携帯電話にはカメラがついていますので、患者さんに食事の写真をとってきてもらい、そのバランスや、野菜の有無を確認するところから始めることもできます。どのような形でもまずはスタートさせることが大事です