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施設紹介手納医院(島根県)

「生きる糖尿病外来」を
目指しませんか

手納 信一 てのう しんいち

手納医院 院長
NPO法人島根糖尿病療養支援機構 理事
島根県糖尿病療養指導士認定機構 研修委員長

 手納信一先生は、東京女子医科大学糖尿病センターに勤務された後、出雲市で開業されました。
患者さんの話を「傾聴」することで、その生き方を問い、糖尿病診療へと導く姿勢をお伺いしました。

Q:大学病院時代と開業されてからでは、診療について考え方など違ってきましたか。

手納:一番違いを感じることは、患者さんに地域の特性があることです。患者さんの年齢層・職業(会社員や農業)の違いに加え、例えば出雲地方は松平不昧公以来のお茶文化があり、和菓子や甘い味付けのものを好む。また、朝の10時や3時に「お茶事」という、おやつだけでなく煮しめなどの副菜と一緒にお客さんを持てなす風習があります。エビデンスに基づいて、標準化すべきことと、その地域の特性に合わせた治療が必要です。

Q:設備やチーム医療の違いで、不便を感じることはありますか。

手納:島根下では、糖尿病専門医は40名に満たず、そこを補っているのが、コメディカルの力です。チーム医療に関しては、こちらのほうが優れているかもしれません。CDE(糖尿病療養指導士)などのシステムがしっかり立ち上げられ、コメディカルを活用しようとする雰囲気が強く、私はある意味で楽をさせてもらっています。さまざまな職種の方々がネットワークで糖尿病患者さんを診ていくと、医療インフラが整い、地域全体としてのオープンサークルのチーム医療を構築できます。

Q:先日の第58回日本糖尿病学会年次学術集会(2015年5月21~24日、下関市)でもチーム医療について発表されましたが、学会発表を努めて行いたいというお考えがあるのですか。

手納:いろいろな活動をしている以上、発表して伝えていかないと、その考え方が発展しないと思います。開業医は多岐にわたる病気を診ており、それぞれの専門があります。私も糖尿病以外の専門の薬を自由に使いこなすことは難しい。各分野の専門家が互いに協力していくには、こちらのやり方を無理強いせず、情報は提供するというスタンスです。お互いに診診連携で、頻繁に患者の紹介をしています

Q:先生は、「生きる糖尿病外来」を目指しているそうですが、「生きる糖尿病」とは、どういう意味ですか。

 
手納:生きることをサポートするのは、全ての医師が考えていることだと思います。
 糖尿病は外科などと違って、治す病気ではなく、疾患とともに生きる病気だと思います。糖尿病が患者さんの人生のなかで、どのような意味をもつのか、きちんと納まっていく医療にしたいです。
 誤解を恐れずに言うと、糖尿病はあくまで体質の変化で、病気ではないとも考えられます。食べたら血糖値が上がり、うまく下がらない体質をそのまま放置するといよいよ脳梗塞、心筋梗塞、網膜症、腎症、失明、透析など、本当の病気になります。そうならないように、体質のレベルでなんとかしましょう、という考えです。
 ですから患者さんが生きることを、どのように考えているのかに目を向けています