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 「『糖質制限はダメ!』と、頭ごなしの否定は、決してしないようにしています」。禁止したり、叱ったりすると、患者は反発し、離れていってしまう。「糖質を我慢しても痩せたい。健康になりたい」という患者の前向きな気持ちを肯定した上で、客観的なデータを伝え、「どうやって糖質を食べたら、体重も血糖値も上がらずに済むのか、一緒に考えましょう」と、患者本人が納得する形で、歩み寄っていく。すると、「以前は一口もごはんを食べなかったけど、先生に言われて少し増やした。でも、血糖は上がらなかったよ」「前は朝食だけだったけど、昼にも主食を食べるようにした」など、徐々に思い込みが溶けていくという。
 「当院のダイエット外来は、別名『食べ方教室』。1年ほどかけて、正しい食べ方を身に付ければ、一生自分でコントロールできるようになります」

 開業11年を迎える岡本内科。『医者はお節介過ぎるくらいがよい』というのが、岡本先生のモットーだ。

 「患者さんの目と耳以外、私とスタッフが全部責任を持って診ます。初診患者には、腹部と頸動脈のエコーを行いますし、がん検診も私からオーダーします。私のクリニックでは多い時で月に2~3人がんが見つかります」

 糖尿病などの慢性疾患で、定期的に通う患者は、「通院して、血液検査も行っているのだから、全部診てくれているのだろう」と安心し、健診を怠ってしまう人が少なくない。「高血圧で長年医者に通っていたのに、がんを見つけてもらえなかった」など、患者と医師の認識のギャップは大きい。

 「糖尿病では、がん、心筋梗塞、脳梗塞の発症率も高い。患者さんには、『年に1回は胃カメラ、3年に1度は大腸カメラ、たばこを吸っている人は、肺のCTを絶対受けてください』とお伝えしています。胃カメラの予約もこちらで取りますし、人間ドックでオプションは何を付ければ良いかなど、健康に関する相談には、全て乗ります」

 超高齢化社会を迎え、人と人とのつながりが薄れる現代だからこそ、医療者には、患者の人生にもう一歩踏み込んだ“お節介”が求められているのかもしれない。

1) A Chandel, et al. Diabetes Care 2008; 31(10): 2013–2017.
2) Funf TT, et al. Ann Intern Med 2010; 153(5): 289–298.
3) Noto H, et al. PLoS One. 2013; 8(1): e55030.