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土井 今回の調査結果について、簡単にご紹介ください。
福田 回答者の内訳は、男性が52.5%、女性が47.5%で、平均年齢74.2歳、身長と体重(平均)はそれぞれ157.2cmと59.8kgでした(図2)。
 直近1ヵ月の低血糖発現率は、主治医の判断では7.8%であったのに対し、患者自身の申告では10.4%と、患者申告のほうが2.6%高いことが明らかになりました(図3)。これは患者が低血糖を起こしていても主治医が認識できていない可能性があることを意味しています。主治医はもう少し緻密に問診を行わなくてはなりません。さらに、自覚症状チェックシートの結果では、低血糖で生じることの多い「冷や汗」、「動悸」、「手のふるえ」、「ボーっとした感じ」、「やたらあくびがでる」、「空腹時のイライラ」、「冷感」、「強い空腹感」にチェックをいれていた患者の割合は31.2%と、主治医と患者が低血糖と回答した割合を大きく上回っていました。これはすなわち、患者本人も主治医も気づかない“隠れ低血糖”の存在を示唆すると考えられます。
 主治医が「低血糖あり」と判断した患者の自覚症状として多かったのは、「冷や汗」、「体がだるい」、「ふらつき」(約30%)、次が「目のちらつき」、「ボーっとした感じ」(約25%)、そして、「手のふるえ」、「強い空腹感」、「動悸」(約20%)でした。一方、「物忘れ」など老年症候群に関連する症状は、「低血糖あり」群と「低血糖なし」群でほとんど差が認められませんでした。
 多変量解析の結果、低血糖の最も強力な判断因子となったのは「冷や汗」であり、次に「強い空腹感」、「ボーっとした感じ」、「ふらつき」、「目のちらつき」などが続き、これまで低血糖の症状と認識されていたものとは少々異なる症状が実際には多いことがわかりました。高齢者の診療にあたっては、このような症状についても注意深く問診し、低血糖を見逃さないようにしていかなくてはならないと感じます。
横野 「冷や汗」を除いて、「手のふるえ」、「動悸」と
いった自律神経症状よりも、「強い空腹感」、「ボーっとした感じ」、「ふらつき」といった脳の低グルコース症状とされるものが自覚症状として多いという点は重要ですね。
福田 今回の調査を通じて私は、一般臨床の先生方が、糖尿病のことをよく勉強されているとの印象をもちました。しかし、医師が思っている以上に、患者さんは低血糖を起こしていること、その対策があまりなされていないことが明らかになりましたので、われわれ医師は、これまで以上に患者への語りかけを増やし、低血糖についての啓発を行っていかなくてはならないと感じます。