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 当クリニック歯科では、外来治療のみならず、病院・施設・在宅への歯科訪問診療にも力を入れている。

 糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病が増悪した結果、脳血管疾患や心筋梗塞などにより通院不可となる患者は増加の一途をたどっている。特に、在宅療養中の要介護高齢者の口腔内は、もはや歯周病スクリーニング検査などといった域ではなく、医療従事者でなくとも一目瞭然の惨状をしばしば目にする()。身体と同様に生じる、口腔や咽頭への感覚・運動麻痺は、口腔のセルフケアのみならず自浄機能をも著しく低下させる()。その結果、経口摂取時の誤嚥性肺炎(要介護高齢者の死因第1位)や、窒息(事故死第1位)といった重篤な摂食嚥下障害を引き起こし、社会問題となっている。

 在宅療養患者で、口腔内が一見して崩壊状態にある場合は、内科医から歯科への対診は比較的容易と考えられる。さらに目的が歯周病予防から肺炎予防に移行する傾向にあるため、内科歯科連携はむしろ取りやすいのが現状である。

 今後、確実に増大する要介護高齢者のADL維持向上においても、糖尿病と歯周病を介したライフステージに即した内科歯科連携の確立は急務の課題と言えよう。